HIV/エイズとPrEPに関する○×質問項目の解説
「セックスライフとPrEPに関する調査」に回答していただき、ありがとうございました。
調査のなかに、HIV/エイズとPrEPに関する情報について質問する項目がありました。その答えを解説させていただきますので、ご参考にしてください。
正答はすべて「○」です。
なお、アンケート結果(単純集計)も近日中に報告させていただく予定です。
HIVに感染していても、治療を継続することで血液中からHIVがほとんど見つからなくなるレベルに減少する。
最近発表された論文(1)によると、日本国内で抗HIV治療を受けているHIV陽性者のうち、99.1%の人が検査で検出できないレベルまで血液中のHIVが減少している(検出限界以下)と報告されています。適切な治療を受け検出限界以下が持続しているHIV陽性者は、HIV陰性の性パートナーにセックスを通じてHIVを感染させるリスクは事実上ないことが近年の研究(2)で明らかとなっています。
HIVに感染していても、治療で血液中にHIVが見つからないレベルの状態(検出限界以下)が継続していれば、セックスを介して相手に感染させるリスクは事実上ない。
普段コンドームを使用しないHIV陽性者とHIV陰性者の男性同性間カップルを対象としたセックスにおけるHIV感染リスクを調べた最近の研究(2)によると、適切な治療を受けHIVが血中から検出されないレベルにまで減少している状態(検出限界以下)が6か月間以上持続しているHIV陽性者からは、HIV陰性パートナーにセックスを通じてHIVを感染させるリスクは事実上ないことが明らかとなっています。もちろんコンドームは淋菌やクラミジアなどHIV以外の他の性感染症を予防するためにも必要なものなので、セックスの際には引き続きコンドームを使用することが推奨されます。
PrEPを始める前に検査を受けてHIV陰性を確認する必要がある。
PrEPは抗HIV薬を服用するということではHIVの治療と一緒ですが、「治療」と「PrEP」では服用する抗HIV薬の数が異なります。現在HIVに感染している人に対する「治療」には3~4剤の抗HIV薬を組み合わせて内服することが標準となっています(多剤併用療法)。一方「PrEP」ではエムトリシタビンとテノホビルDFという2成分の薬の合剤であるツルバダ配合錠のみを内服することになっています。もしもすでにHIVに感染している人がご自身のHIV感染を知らずにPrEPをしようとしてツルバダ配合錠のみを内服した場合、本来3~4剤の抗HIV薬の内服が必要にもかかわらず2剤のみの不十分な治療を続けることとなり、ウイルスが薬剤耐性変異(薬が効きにくいウイルスに変わってしまうこと)を起こしてしまうリスクがあるので避けなくてはいけません。そのためPrEPを行う前には、必ず信頼できる血液検査でHIVが陰性であることを確認する必要があります。またPrEP中に新たにHIVに感染していないことを確かめるため、3か月ごとにHIVの血液検査を医療機関で受ける必要があります。
PrEPを始めた後は、3か月ごとに定期的に医師の診察を受けなければならない。
PrEP中の人がHIVに感染した場合、ウイルスが薬剤耐性変異を獲得するのを防ぐため、出来るだけ早期に3~4剤からなる抗HIV薬による治療(多剤併用療法)を開始しなくてはなりません。したがって定期的(およそ3か月に一回)HIVの血液検査をしてHIVに感染していないかを確かめる必要があります。またPrEPに使用されるツルバダ配合錠には、まれに腎機能障害などの副作用を起こすことが知られているため、副作用がないかを調べるために医療機関を受診し定期的な血液検査を受ける必要があります。さらに定期的に医療機関を受診することで性感染症を早期に発見・治療を受けることができる利点もあります。
PrEPを始めた後は、一生飲む必要はなく、やめることができる。
パートナーとの関係やあなたの置かれている状況によってHIV感染リスクは変化します。HIVに感染するリスクがなくなったり、他の予防方法を使いセーファーセックスができるのであれば、PrEPは必要ありません。
PrEPの薬にはジェネリック薬(後発医薬品)も存在する。
海外ではPrEPに使用できるジェネリック医薬品(後発医薬品)が広く使われています。 一方、日本では現在(2026年7月)、PrEPに使用するジェネリック医薬品は承認されていないため、利用する場合は海外から個人輸入することになります。ジェネリック医薬品を使用する場合でも、安全にPrEPを続けるために、医療機関で3か月ごとのHIV検査や腎機能検査、性感染症の検査などを受けることが大切です。
海外では、性行為の前後の決められた時間に服薬するPrEPも提案されている。
現在多くの国で推奨されているPrEPは、ツルバダ配合錠を一日一回一錠毎日継続して内服する方法です。この方法は海外では「デイリーPrEP」と呼ばれています。一方たまにしかセックスしないなどHIVへの曝露機会が少ない人などには、HIVに曝露する機会前後のみにツルバダ配合錠を内服する方法のPrEPも代替法として実施されている国もあります。この曝露機会の前後のみ内服する方法を海外では「オンデマンドPrEP」と呼んでいます。具体的にはセックスなどの曝露機会の2~24時間前までにツルバダ配合錠を2錠を内服し、最初の内服から24時間後に1錠、さらに48時間後に1錠、合計でツルバダ配合錠を4錠計画的に内服する方法です。オンデマンドPrEPの効果としては連日内服するデイリーPrEPとほぼ同等のHIV感染予防効果があるとされていますが、膣性交をする女性には予防効果が不十分とされ推奨されておらず注意が必要です。
PrEPの薬を服用していてもHIV以外の性感染症にはかかってしまうので、性感染症の予防にはコンドームの使用が有効である。
PrEPを行い毎日欠かさずツルバダ配合錠を内服することで、HIVに感染するリスクを90%以上減らすことができます。一方PrEPはHIVの感染リスクを減らすことはできても、それ以外の性感染症(淋菌やクラミジアなど)を予防することはできません。したがってPrEPをしていても、セックスの際にコンドームを使用することは、あなたとあなたのパートナーの健康にとって大切です。
HIV感染に気づかずにPrEPを始めてしまうと、薬剤耐性のHIV株が出現してしまう。
すでにHIVに感染している状態でPrEPを始めると、PrEPの薬だけではHIVを十分に抑えられず、薬が効きにくい「薬剤耐性」が生じることがあります。そのため、PrEPを始める前には必ずHIV検査を受け、開始後も3か月ごとに定期的なHIV検査を受けることが大切です。
予防に失敗した後にPrEPを使用してもHIV感染は防ぐことが出来ない。
PrEPはHIV感染を事前に予防する薬です。感染が成立した後に飲み始めても、HIV感染を防ぐことはできません。感染の可能性がある行為の後は、72時間以内に3種類の抗HIV薬を使用するPEP(曝露後予防)を開始する必要があります。PrEPとPEPは目的も使い方も異なるため、適切に使い分けることが重要です。
- Iwamoto A et al, The HIV care cascade: Japanese perspectives. PLOS ONE. doi.org/10.1371/journal.pone.0174360. March 20, 2017.
- Rodger A et al. Risk of HIV transmission through condom less sex in MSM couples with suppressive ART: The PARTNER2 Study extended results in gay men. AIDS 2018, 23-27 July 2018, Amsterdam. Late breaker oral abstract WEAX0104LB.
http://programme.aids2018.org/Abstract/Abstract/13470
https://tinyurl.com/y6tweapv (webcast)
